症状
脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで突然発症します。
その結果、以下のような症状が急に現れます。脳卒中を大きく分けると、脳の血管が詰まる脳梗塞、血管が破れて脳内に出血する脳出血、脳の動脈瘤が破裂して出血するくも膜下出血の3種類があります。脳梗塞と脳出血では症状に共通点が多く、主に下記のような片麻痺や言語障害などが起こります。一方、くも膜下出血では突然経験したことのないような激しい頭痛が典型で、重症の場合は意識障害や嘔吐を伴います。

片側の顔や手足に麻痺・しびれが生じる(右半身または左半身)
急にろれつが回らなくなる、言葉が出ない、相手の言うことが理解できない
力はあるのに立てなくなる、歩けなくなる、ふらついて真っ直ぐ歩けない
片方の目が見えなくなる、視野の半分が欠けて見える、二重に見える
経験したことのない激しい頭痛が突然起こる
なお、一時的に症状が出て自然に消える一過性脳虚血発作という病気もありますが、これは脳梗塞の前触れの可能性があり危険です。たとえ症状が軽快しても放置せず、必ず医療機関で検査を受け、適切な治療を受けることが重要です。これらの症状の特徴は、何の前触れもなく突然起こることです。少しでも「おかしいな」と思う症状があれば、脳卒中の可能性があります。症状に気づいたら一刻も早く救急車を呼び、専門の医療機関を受診してください。迅速な対応が命を守り、後遺症を軽減します。
予防
脳卒中は生活習慣との関わりが深いため、日頃の健康管理が予防に繋がります。
日本脳卒中協会が提唱する「脳卒中予防十か条2025」では、以下のようなポイントが挙げられています。

脳卒中予防十か条2025(ポイント)
- 高血圧の管理: 血圧が高い場合は治療し、適正な血圧を維持しましょう。高血圧は脳卒中最大の危険因子です。
- 糖尿病の適切な治療: 糖尿病を放置せず、しっかり治療しましょう。血糖コントロールが不十分だと脳卒中リスクが高まります。
- 心臓のケア: 心房細動などの不整脈が見つかったらすぐに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。心臓由来の血栓による脳梗塞を防ぐことにつながります。
- 禁煙と節酒: 喫煙は脳卒中の大きなリスク要因です。タバコはやめましょう。飲酒は適量に留め、過度の飲酒を控えることも重要です。
- 食事と運動: 塩分(目標1日6g未満)や脂肪分を控えたバランスの良い食事を心がけましょう。適度な有酸素運動を継続し、肥満にならないよう体重管理を行いましょう。
以上のような生活習慣の改善が脳卒中予防に効果的です。特に高血圧の予防・治療は脳卒中発症リスクの低減に直結します。これらの危険因子を適切に管理することで脳卒中の大部分は予防可能であることが明らかになっています。日頃から健康診断を受け、自分の血圧や血糖値などを把握し、医師の指導のもとで適切な対策を取りましょう。小さな積み重ねが将来の脳卒中予防につながります。今日からぜひ生活習慣を見直してみましょう。
治療
脳卒中の治療方法は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血でそれぞれ異なります。

いずれの場合も発症からできるだけ早く治療を開始することが極めて重要です。早期に治療を行うことができれば、症状の軽減や後遺症の軽減が期待できます。
脳梗塞(脳の血管が詰まるタイプ)
発症から4.5時間以内であれば、血栓を溶かす血栓溶解療法(t-PA静注療法)が行われます。この薬剤により詰まった血管を再開通させることで、症状が劇的に改善する可能性があります。また、太い血管が詰まっている場合にはカテーテルを使った血管内治療(血栓回収術)によって血栓を物理的に取り除く治療も行われます。このカテーテルを使った血管内治療は発症から24時間以内であれば有効な場合があります。こうした再開通治療によって、途絶えた脳への血流を早期に回復させることが脳梗塞治療の要となります。
脳出血(脳内で血管が破れるタイプ)
脳出血が起きた場合、まずは降圧療法(血圧を下げる治療)で厳格な血圧管理を行います。出血による脳の腫れ(浮腫)を抑えるため、脳のむくみを取る薬(抗脳浮腫薬)を投与することもあります。出血量が多く命にかかわる恐れがある場合には、頭蓋骨の一部を外して血の固まり(血腫)を取り除く手術が検討されます。状態に応じて、開頭術のほか内視鏡や定位的手術などで血腫を除去する方法が選択されます。
くも膜下出血(脳動脈瘤の破裂によるタイプ)
脳の動脈にできたコブ(脳動脈瘤)が破裂して起こる重篤な脳卒中です。治療としては、破裂した動脈瘤に対しては、開頭クリッピング術(動脈瘤の根元をクリップで挟み、動脈瘤への血流を遮断する方法)やカテーテルによるコイル塞栓術(動脈瘤の内側から動脈瘤内にコイルを充填していき、動脈瘤への血流を最小限にする方法)によって出血源を遮断します。いずれの場合も再出血を防ぐため、迅速な対応が求められます。
どのタイプの脳卒中でも、できるだけ早く専門の医療機関で適切な治療を受けることが最も大切です。治療後は後遺症を最小限に抑えるためのリハビリテーションや、再発予防のための内服治療(抗血小板薬・抗凝固薬の継続、危険因子の管理など)が欠かせません。
リハビリ
脳卒中の発症後、リハビリテーション(機能回復訓練)が回復への鍵となります。
脳卒中によって生じた麻痺や言語障害などの後遺症を少しでも改善し、日常生活における自立度を高めるためにリハビリを行います。リハビリ専門医の指導の下、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが連携し、患者さん一人ひとりの症状に合わせたオーダーメイドの訓練プログラムを実施します。理学療法では麻痺した手足の運動機能回復や歩行練習など身体機能の改善を図り、作業療法では食事・着替えなど日常生活動作の練習を行います。言語聴覚療法では失語症(言葉の障害)や嚥下障害(飲み込みの障害)に対する訓練を行い、コミュニケーション能力や飲食機能の向上を目指します。


リハビリは通常、急性期・回復期・維持期の段階に分けて行われます。発症直後の急性期から可能な範囲でリハビリを開始し、廃用症候群(動かさないことで起こる筋力低下や関節拘縮)の予防と基本動作の早期回復を図ります。その後の回復期リハビリテーション病棟では、できるだけ早期に集中的な訓練を行い、生活動作能力の最大限の向上を目指します。自宅に戻った後も、外来リハビリや訪問リハビリなど維持期のリハビリを続けることで、獲得した機能を長期に維持し、再発防止や生活の質の向上に努めます。維持期には装具の調整やドライブシミュレーターを用いた運転機能評価を実施することもあります。

リハビリテーションは根気強い取り組みが必要ですが、多くの患者さんはリハビリによって日常生活での自立を取り戻し、社会復帰を果たすこともできます。現在の医療技術では脳卒中による機能障害を完全に元通りに治すことは難しい場合もありますが、適切なリハビリを継続することで、できなかった動作ができるようになったり、介助の必要が減ったりするなど大きな改善が期待できます。